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輪編みの編み方徹底図解 ホームへ
棒針を使った輪編み技法の図解です。歴史的輪編み技法の解説もあります。

終わりに

今回は、第Ⅱ部歴史編から第Ⅲ部実践編までは、過去から現在へと編み物の伝統を旅するような構成にしました。その旅もここで終わりです。

輪編みは本当に古い歴史を持っていて、聖母マリアがイエスの産着を編んでいる聖画に描かれているのも輪編みの場面です。輪編みはビジュアル的にもサマになりますし、なにより、棒針の下にいきなりセーターや靴下の実物が生み出されてくる驚きがあります。 また、左手に残った空の棒針をすっと右手で抜いて、次の針を編み始めるリズムに独特の心地よさがあります。

輪編みで編む、手袋・靴下・帽子といった作品は簡単に編める楽しい小物たちですし、実用上も便利なものです。 手編みの手袋や帽子の暖かさは市販品とは比較になりません。最近ではかえってそんな暖かさを知らない人も増えてきたようで、気の毒に思います。いいウールで丹念に編んだ靴下の前では、「足の冷えない靴下」など、かすんでしまうと思います。ウールは自身の重さの35%まで水分を含んでも濡れたと感じさせない優れた繊維です。最近増えてきたらしい、冷え性に悩む人には手編みの靴下の素晴らしさをもっと知って欲しいと思います。

実用面だけではありません。楔形文字の古代アナトリアで有名な、トルコのアナトリア地方の靴下はイスラム独特のビビッドな幾何学模様が鮮やかで美しく、見飽きません。もちろんスカンジナビア諸国の靴下の美しさも語り尽くせません。この靴下編みの伝統は、アメリカにも引き継がれているようで、靴下だけを編むソックニッターズという団体があります(ここではKnitter と呼ばず Socknitter という造語を使います)。日本では「かぎ針の編みぐるみ」が編み物の小物として一つのジャンルとなっていますが、アメリカで同じような位置付けにあるのが靴下です。アメリカで編まれる靴下は実用というよりも、プレゼントなどに使われる、可愛らしいオブジェやアクセサリーなのです。

またミトンは、日本では児童のものというような印象がありますが、脱ぎ着が簡単で、編みやすく、デザイン的にも色々なバリエーションが楽しめます。エストニアやラトビアなど、バルト地方の伝統柄で編まれるミトンの美しさは本当にタメイキのもれるものです。これなどは日本でも、もっと評価されてよいものだと思います。

帽子に関しては、私達は二人とも帽子好きで、一年中色々な帽子を被ります。ヘアスタイルが乱れるという理由で嫌がる人が多いようですが、慣れてくると、帽子を被らないと落ち着かなくなります。被っていないとなにか、一つ欠けている感じがするのです。

最近若い人たちの中に、ざっくりとしたニット帽やワッチキャップを被っている人をよく見かけるようになりました。とてもうれしい気がすると同時に、振り返りながら「手編みならもっとかっこいいぞ」と心でつぶやく私達がいます。私達はこの挑戦的なつぶやきを、次世代の人達に受け止めてもらいたいと願っています。

最初に編み物の旅がここで終わりと書きましたが、これは早計すぎました。私達にとってニットの旅は、これからも続く未来への旅なのです。

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