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輪編みの編み方徹底図解 |
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棒針を使った輪編み技法の図解です。歴史的輪編み技法の解説もあります。 |
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1.2 輪針と四本針
前章で、輪編みが難しいと書きましたが、実は難しいのは棒針を使った輪編みです。もう一つ、輪針を使った輪編みは平編みが編める人であれば難しくもなんともありません。輪針とは短い棒針の間を柔軟性のあるプラスチックの紐などで繋いだ編み針です。(輪針という名前ですが、平編みにも便利に使えます。)輪針は棒針を組み合わせて輪編みするときのように途中で針を換える必要がないので、どんどんと編めますし、針と針の間の目がゆるむということもありません。編み針が自由になるため編みやすいという事と合わせると理想的な編み針と言っていいでしょう。
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輪針 | 四本棒針による輪編み |
しかし、残念なことに輪針には一つの決定的な弱点があります。それは一本の輪編み針では、編める編地の幅(円周部分の長さ)がほぼ固定されてしまうということです。輪編み針は一方の先端からもう一方の端までの長さが一定です。編むというのは左の針から右の針へ目を移していくことですから、針全体の長さと編地の長さが一致しなければなりません。もし、編地の長さが針に比べて長すぎると右端に出来た目の圧力で左の針先から
目がこぼれ落ちてしまいますし、逆に編地の長さが短いと、左の針先に目を移動させると、右側の目が針先からずれてしまい、編めません。実際は編地には伸縮性がありますから厳密に特定の長さ以外の編地が編めないということはありませんが、それでも編める目数の範囲は限られていて、適切な長さの輪編み針でないと編み心地が極端に低下します。
クロバー社のカタログで、「匠」の輪針を見ると、短・中・長の三種類が発売されており、それぞれ40cm, 60cm, 80cmとなっています。短は帽子など小物用、中はセーターの身頃用、長は丸ヨークのヨーク部分やカーディガンの前立て用です。ずいぶん種類が多いようですが、実際に使ってみるとそれぞれの中間くらいの長さが欲しくなることがあります。この3種類を全ての号数そろえようとすれば、0〜15号の16種類×3=48本となり、価格は4万円以上となります。なんとか節約したいと思っても、例えばセーターの形で言えば、クルーネックとVネックでは長さがずいぶん違いますので、一本の輪針で兼用するのは難しく、結局どんどん輪編み針が増えていくことになります。(よく初心者は長めのものがあれば兼用できると考えて失敗をするのですが、実は輪編み針は「長は短を兼ねない」の典型で、どちらかといえば長いより、短い方がマシなのです。)
輪針が不経済になりやすいことは大きな問題ですが、それはお金をかければ解決するかもしれません。いくら高いといっても現在の日本では、まぁ買えないほどではありません。しかし決定的な問題は、輪針は必要とするだけ短い製品を作ることができないことです。輪針は構造上、棒針部分の長さは人間の手自体の大きさ関係でそんなに短くできませんし、つなぎ部分も棒針の2〜3倍の長さがないと輪にして編むことができませんので、これも極端に短くはできません。一番短い製品では、20cmくらいの輪編み針も発売されていますが、これを使っても編めるのはセーターの袖先くらいが限界で、おそらく手袋や靴下を編むのは難しいでしょう(デザインにもよりますが)。仮に適合する長さの輪針を使って編むとしても、たとえば帽子の頭頂部で減し目をしていけば編地はどんどん縮まっていき、すぐに輪針では編めなくなります。まして、手袋やミトンの指や靴下のつま先となれば、輪針で編むことは絶望的です。
これに対して、棒針の場合、棒針どおしが交差してできる多角形の辺の長さは伸縮自在ですので、4本針1セットあればセーターの身頃からベビーミトンまで編めます。(理論上、最低で3目の輪編みも可能です。)もちろん実際には、編む作品のサイズによって編みやすい棒針の長さはすこしずつ変わりますが、扱いやすさの違いであって、輪針のように全く編めないということはありません。また、仮に棒針4本では短くて丸ヨークなどの長い輪編みが編めないというような場合でも、2本を買い足して6本にすれば用が果たせるでしょう。輪針のように全体を買い換える必要はありません。(...とは言え、丸ヨークの場合は輪針が本当に便利ですが...)
結論として、輪針は確かに便利で強力なのですが、万能ではなく、棒針による輪編みを完全に置き換える能力を備えてはいません。したがって、棒針を使った輪編み技法は編み物をする上で基本的となる技法の一つなのです。
このページでは、「棒針を使った輪編み技法」についてこれから解説いたします。
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