4.2 針通し − 右針を左針の目に通す
編目への右針の通し方
左の針にかかった目に右針を通すとき、初心者は針先から編目の穴に通そうとしますが、これはよくありません。針先が糸の繊維の間にかかり糸割れしてしまいます。また右手が外側にひねられる動作になるので手にも負担がかかります。糸を割らないためには針先が重要です。針先がごくわずかでも糸の間を通ってしまうと、それ以降どのように針を動かしてもなかなか外れません。したがって最初から糸の繊維を引っ掛けないのが重要な
心がまえです。
針の通し方(この図は誇張して書いています。実際にはこれほど目は移動させません。)
私は初心者の方にどのように説明すればよいかを考えましたが、糸を割らないためには最初に左針の編目と編目の中間に針を置くのがよいという結論になりました。これから通そうという編目があるとついそちらに針先が行くのが人間の心理ですが、それに反して目と目の中間の左針の上に右針の先を置くのです。(上図 A)
なぜかというとこの場所が一番毛糸の繊維が少ない場所だからです。次に左針上に置いた右針を下に下げながら右方向に動かし、通そうとする目を右針の腹部分で右に少し押します(上図 B)。こうすることで、かかっている編目が少し広がって針を通しやすくなると同時に糸に張力がかかるため広がっていた毛糸の繊維が締められて糸が細くなります。このため糸を割る恐れが少なくなります。この状態で右の針先を左針の下をすべらせながら向こう側に抜きます(上図 C)。強引な理屈ですが、最初に左針に右針を置き、左針から右針を放さないまま編目をくぐらせることができれば絶対に針先が糸を割ることはないのです。もちろん実際にこの理屈どおりにはいかないにしても、戦略としては間違っていないはずです。どちらにしても、正しい右針の通し方は、先に説明した誤ったイメージとは針の角度や経路がまったく異なっていることに気が付くでしょう。
(注意)
ここで私は、最初に左針の目と目の間に右針を置くように説明しましたが、これは初心者のためのアドバイスです。初心者の場合は針先の動きが安定せず、仮に編目の中を狙ったとしても一発で通りません。編目を直接狙わせると、どうしても針先が編目にむいてしまいますが、どこかに目標点を決めないとますます針の動きが定まらなくなってしまいます。そのため、分かりやすく、問題の少ない場所をと考えて左針の目と目の間を選びま
した。ここは狙いやすく糸割れの恐れが少ない上に、右針を左針の上に置くことで右手のぶれを少なくする効果があると思ったからです。もちろん、上達してくればこの場所にこだわる必然性はありません。直接編目を狙ってよいと思います。しかし最初に右針を入れる位置を一定にすることは編む速さをあげるためには結構重要なポイントであるため、それぞれに工夫は必要でしょう。
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