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ノースリーブセーターの編み方 ホームへ
初めてセーターを編む方のためにノースリーブセーターの編み方を徹底図解します

1.セーターの概要 2.道具と編み方 3.スワッチを編む 4.体を測る 5.編み方概要・編図

3. スワッチを編む

セーターを編む際は、まず「スワッチ」を編みます。「スワッチ」とは試し編みの編地のことです。日本では、「スワッチ」はあまり一般的な編み物用語ではないようで、「スワッチ」のことを「ゲージ」と呼び、スワッチを編むことを「ゲージを編む」というように言います。「ゲージ」とは編目の大きさのことで、日本では10センチ四方に何目・何段あるかという数がゲージの単位として一般的です。試し編みをする主な目的が編地のゲージを測るため、試し編み自体を「ゲージ」と呼ぶようになったものと思います。ただ、「スワッチ」はゲージを測るためだけのものではなく、それ以上の価値があります。ですから私たちは、このページでは試し編みの編地を「ゲージ」と呼ばず、「スワッチ」と呼ぶようにします。

初心者の中にはスワッチを編むことを知らないか、知っていても編まない人もいるようです。私たちも最初の頃は、道具を揃え、糸を買い、さぁこれからセーターを編もうという一番気合の入っているときに、身頃ではなくて試し編みをしなければならないと思うと、げんなり、というような気持ちになったこともありました。しかし、だんだんと経験を積んで、試し編みの重要性が分かってくるうちに、スワッチを編むのは苦にならなくなりました。今では、スワッチは辛いものではなく、新しい作品を編むための第一歩として、とてもワクワクするものとなっています。できた編地を触ったり、測ったり、考えたりしているうちに、作品のイメージがだんだんと具体的に固まってくるのです。私たちは多くの場合、まず一玉だけ毛糸を買い、スワッチができたところでその糸を使うかどうかを決めます。面倒なようですが、一着分の毛糸を買って、編み始めたら編地がイメージと違った、というような恐ろしい出来事を回避するためには、これくらいの手順は踏んでも構わないのではないかと思います。編み物本の作品の写真を見て、いいなと思ってその糸を買って編み始めてみたら、何かイメージと違う、ということで結局完成しなかったというような経験をお持ちの方もきっともいると思います。勝負は下駄を履くまで分からないといいますが、編み物の場合、編地を見るまで毛糸の本質は分からないのです。

しかし、こう書いてもスワッチ嫌いの人は多いようで、最近は編み物教室でさえ、あきらめてスワッチ編みを省略することもあるそうです。どうも「スワッチなんか編まなくても同じ毛糸と同じ棒針ならゲージも大きくは狂わないのでは?」と思っている人もかなりいるようです。 しかしこれは間違いです。同じ棒針を使っても人によってゲージは天地ほども違います。毛糸のラベルには、標準の棒針号数と標準ゲージというものが書いてあって、あたかもその「標準棒針」を使えばその毛糸のゲージはほぼ「標準ゲージ」と同じになるかのような印象を持ってしまう人もいるかもしれませんが、実際には「標準」なるものはありません。同じ毛糸を使っても、風合いを大事にする近代セーターと防風・防寒・耐久性を重視する伝統セーターとでは作品に使うゲージが全く違います。針の号数も平気で5号くらいは変わります。また、一人一人の編み方、手の大きさ、引きの強さ、は本当にまちまちです。それによって当然ゲージは大きく変わります。これは個性であって善し悪しや標準・非標準とは違うものです。よく本のゲージと違う場合に自分の編み方がおかしいと思う人もいるようですが、人の身長や体重がまちまちなように棒針とゲージの関係もまたそれぞれです。どれが正しいということはありません。市販の編み物本をよく調べてみると、同じ糸を使ったメリヤス編みのセーターでも、書かれているゲージは結構違います。私たちの経験でも、同じ毛糸のシリーズで太目と細目の糸が発売されていた際に、作品によってゲージが逆転しているということがありました。つまり、太い糸の方がゲージが細かかったりすることもあるのです。また、毛糸メーカーによっても標準ゲージは違うようです。

さらに決定的なこともあります。それは「誤植」です。私たちも作品を発表するようになって感じるのですが、作品の説明の中から誤植を校正するのは大変です。自分の頭の中にある編み方と、全く違った編図を書いてしまって、それに気づかないという信じられないような間違いもしました。編針の号数など、もし6号と8号とを間違えて書いていてもなかなか気づくことはないでしょう。もちろんゲージの場合、誤植があると作品の寸法との比較で他の人でも気づく可能性があります。事実私たちもそういう誤植を発見したことがあります。しかし、棒針の太さだけはちょっと分かりません。とはいえ、ときどき自分達のゲージではちょっと信じられないような号数の棒針が指定されていることはあります。はっきり間違いとは断定できませんが、編み物本は一冊の本の中に様々な作品が詰め込まれているのですから、誤植の危険性は常にあるのです。ですから、私たちは本に書いてあるゲージよりも、自分のスワッチのゲージを信じます。スワッチのゲージというのは正確に測りにくいものですから、ついついスワッチで実際に測った値よりも、本のゲージの方が正しいだろうという思い込みをしたりすることがあるのですが、今までの経験では、だいたいそのような思い込みをあざ笑うかのように、しっかりと自分のゲージで出来上がります。ですから、自分のゲージを信頼し、大事に扱いましょう。

ときどき、かなり編める人でもスワッチが嫌いで、一か八かで作り目をして編んでいくドキドキ感がたまらないという人もいるようです。また、サイズが違って出来上がることをそのまま受け入れる人もいるようです。誰か、着れる人にあげればいい、というように。もちろん趣味の場合、どのようなやり方をしても個人の自由ですのでそれらを批判するつもりは全くありません。しかし、世界的に有名なニットデザイナーであり、同時に3歳から編針を持っていたという生来のニッターでもある、アリス・スターモアでさえ、スワッチを編むことは 'Golden Rule'、[黄金律]だと言っています。私たちは、少なくともファッション性を持つセーターを編む上で、スワッチを編むことは欠かすことの出来ない一ステップであると信じています。さらに、スワッチを編むことは、嫌がるようなことではなくて楽しいことだ、ということを初心者の方に強く訴えたいと思っています。

スワッチの効用

1.糸と模様に慣れる - ウォーミングアップ

現在はさまざまな素材や構造の糸が売られています。糸の種類によって、編みやすさが違いますし、模様編みのセーターを編む場合は模様のリズムに一度でも慣れておくと、失敗の確率が少なくなります。編み込みの場合も同様です。編図と首っ引きというような状態で編んだ編地は、作品の中にあるよりは、スワッチの中にあるほうがいいでしょう。これからセーターを長い時間かけて編んでいくのです。模様編みの練習や編み込みの練習に、スワッチを編むことで少しウォーミングアップをしましょう。

2.編地の雰囲気や性質を確認

スワッチを編めば、編地の厚さ、肌触り、色合いを確認することができます。肌に直接触れるニットウェアの場合は、首筋や脇などにスワッチをあててちくちくしないか確認してください。いいセーターになる場合は、だいたいスワッチが出来た時点でいいものになりそうだという、かなりはっきりした手応えを感じます。スワッチが堅すぎる・緩すぎる・重すぎるなど、気に入らない場合は、別のセーターに換えたほうがいいかもしれません。色も大事ですので、持っている服に乗せてカラーコーディネイトを確認してみましょう。編み込み模様の場合は色合わせをよく確認しましょう。実際に編んでみると、写真でイメージしていたものとずいぶん色の雰囲気が違うものです。また、コットン糸など縮みが予想される糸の場合は、出来たスワッチをコピーに取り、その後でセーターを洗うのと同じ方法で洗濯します。厳密にする場合は、2・3度洗濯を繰り返すといいでしょう。その後、コピーのゲージと実物とを比較し、縮んだ比率を計算して、その分だけ大きなサイズに編みます。

スワッチ編みの注意点

1.きっちり編む

スワッチを編むというのは、セーター作成の中の非常に重要な作業ですから、気を抜かないできちんと編みます。小さな編地は両端の部分が乱れやすいことが多いので、両端まで同じ調子でしっかり編んで下さい。ただ、あまりに緊張して普段と違うリズムで編んだりしないように、いつもの調子で編んで下さい。

2.大き目に編む

15センチ×15センチくらいの大きさを目安に、なるべく大き目に編むようにしてください。面倒なのと毛糸を節約するために小さなスワッチを編む人もいます。もちろん、小さなスワッチでも編まないよりも編んだほうがいいのですが、できれば大き目のスワッチを編むようにしてください。なお、アランのような大模様の場合は、模様単位のスワッチを編みますので、身頃の5分の1くらいの大きなスワッチを編むこともあります。

3.ほどかない

編みあがったスワッチをすぐにほどいてしまう人がいますが、スワッチは少なくともセーターが完成するまでほどかないで下さい。もし、毛糸が足りないという場合でもできるだけ最後まで残しておいてください。スワッチはセーターを編む際に、いつも側においていて、見比べて下さい。スワッチを握ったときの編地の堅さと今編んでいる編地の堅さを比べるだけでもだいたいのゲージ比較ができます。

4.記録する

私たちはスワッチをすべて保存して残します。こうしておくと、将来自分のオリジナルを作るときにきっと役立ちますので、いつかオリジナルを作ってみようという方は、是非スワッチを大事にしてください。ただし、スワッチにはすぐに日時・毛糸の名前・色番号・ロット・編んだ棒針の号数、ゲージサイズなどを書いたタグをつけて下さい。ちょっと間をあけるとすぐに忘れてしまいます。編み物の中で、「記録」というのは非常に大事な仕事の一つですから、できるだけ色々な情報をノートなどに書きとめるようにして下さい。

スワッチの編み方

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まず、ラベルの標準ゲージを見て、その目数の1.5倍〜2倍を作り目します。作り目は指でかける作り目でいいでしょう。正方形になるまで編んだら、伏せ止めします。編みあがった直後は、メリヤス編みなどはかなり強く丸まります(上左)。そのままゲージを測っても構いませんが、測りにくいので、最初にアイロンを掛けるといいでしょう(上右)。スチームアイロンの蒸気だけをスワッチに当て、あまりひっぱったりしないように注意して、丸まりをとります。出来るだけ四角くなるようにしたほうが測りやすくなります。作り目側を下に置き、逆ハの字を一目と数えながら(下左)10センチ四方の目数・段数を丁寧に数えます。何度か測り直して平均しても構いません。半目になる場合は0.5と数えて構いません。なお、下右の写真は専用のゲージ定規を使っています。スワッチを沢山編む場合は便利ですが、普通の定規で縦横を測ればいいので、無理に購入するまでもありません。

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ゲージが違ったら

もし、本に記載されたゲージと違った場合、どうするかですが、これはケースバイケースです。たとえば少しゲージが本より小さい場合、本のサイズがMサイズだとすれば、Sサイズに出来上がるかもしれません。自分のゲージに目数や段数を掛けて出来上がり寸法を確認してみてください。自分の体型がSサイズでいいのならそのまま編んでもいいでしょう。本のゲージを同じゲージがどうしても必要な場合は、針を変えてもう一枚スワッチを編みます。一枚でも面倒なスワッチを二枚編むとは拷問のように思えるかもしれませんが、私たちもスワッチを二枚・三枚と編むことは珍しくありません。セーター全体を失敗することを思えばスワッチの一枚は安いものです。納得いくまでやりなおしましょう。注意するのは、「ちょっときつめに編んでいこう」とか「すこし緩めに編めばぴったり」というような手加減をしようとする場合です。うかつにこれをやると、きつめとか緩めとかの傾向がどんどん拡大していって知らない間にとんでもなくゲージが変わってしまっていることがあります。なるべく、普通に編んでヨシという号数を見つけましょう。

しかし、目数と段数の比率が大幅に違う場合は事件です。これはアラン模様など、交差系の模様編みで起きることが多いようですが、本に載っている通りに編むとバランスを欠いたセーターが出来上がってしまう恐れがあります。したがって、編地のサイズに合わせて、目数・段数の調整をする必要があります。しかし、大模様の場合はそれができないこともあるでしょう。難しい判断ですが、余りにもバランスが違う場合は、どこかにおかしいところがある可能性がありますので、思い切って別のセーターを編む、というのも必要かもしれません。こういうとき、ついつい「同じ模様編みをしているのだから、全体のサイズはともかく、段と目のバランスが合わないはずはない、出来上がったらちゃんとなっているだろう」などと思ってしまったりするのですが、前にも書いたようにほとんどの場合、恐ろしいほど自分のゲージに合った出来上がりとなってしまいます。こういうことがあるので、スワッチを編むまでは一着分の毛糸を買わないほうが安全なのです。


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