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2.裏編みの現状 − 色々な裏編み方法

色々な裏編みの方法

裏編みは表編みとは逆の編み方です。表編みは糸を編目の向こうから手前に引き出しますが、裏編みでは逆に手前から向こうに送ります。似たような技法に見えますが、難易度は格段に上です。なかなか上手く編めないと悩む方が本当に多いのが裏編みです。私たちも最初はとても苦労しました。初心者はまず、針に糸が掛からないのです。何度針に糸をかけようとしても見事にすべってしまい、10回やっても20回やってもたった一目が編めません。そのため、皆えい!とばかりに色々なことを試します。その努力はさまざまな編み方になって現れます。

人差し指を下げる編み方
人差し指を下げる裏編みの編み方

上図のように、糸をかけるときに人差し指を下げるのはかなり一般的です。編む速度への影響もどちらかといえば少ないことから、これはどうやら裏編みの正当なバリエーションとされているようです。広瀬光治先生のビデオでも、人差し指を下げない編み方(ここで説明する編み方)とこの編み方の両方を(意図的に)使っています。これは、こう編んでも構わないという意味だと思います。逆に言うとそれほど多くの方がこの編み方をしているということになります。

上の編み方は別としても、下図(1)のように中指を使うのはかなり無理があります。画を描いていても指がつりそうな感じです。また左針を持つべき指を離しては編む速度に影響がでます。下図(2)のように、親指を使う方もいます。これも、編む速度への影響が大きく、また編目も揃いにくいと思います。最後の手段として、下図(3)のように左手で毛糸を持って引っ張る人もいます。

中指でかける編み方 親指でかける編み方 つまんでかける編み方
(1)中指をつかう (2)親指をつかう (3)つまんで引っ張る

ここにあげたのは実際に私達が見たことのある編み方の一部ですが、日本にはこれ以外にもまだまだ変わった方法を使っている人がいることと思います。私が一番仰天したのは、なんと右手の指で糸をつまんで掛ける方を見たときでした。一目一目右手を使って糸を掛けるのでしたら、糸を左指にかけている意味がありません。どうしても難しいなら、フランス式よりアメリカ式を覚えるべきではないかと思わずにはいられませんでした。しかし、ここまでしたくなるほどフランス式裏編みは初心者にとって難しい編み方なのです。

以上の編み方は見た目はともかくとして結果的に正しい編目ができる方法ですが、糸と針の関係を間違えて編目が逆目になってしまうような間違った編み方になっている人もいます。

しかし、裏編みは教えるのも難しい

これらの個性的な編み方を見ると胸が痛むことがあります。私達も裏編みにはとても苦労しました。なんとしてもこの針に糸をかけたいと全身をねじるような気持ちで奮闘したことを昨日のように思い出します。しかしいつの頃からか段々と針に糸がかかるようになり、やがて表編みと同じ速さ、確実さで編めるようになりました。不思議なもので、こうなるとなぜ針に糸がかからなかったが逆に分からなくなりました。覚えるのに難しい裏編みですが、人に教えるのもまた難しいのが裏編みです。どう説明すればいいのかわからないのです。本を見ても「針に糸を絡めるようにして編む」としか書いてありません。このような文章は昔自分達が読んで「針に糸が絡まらないから困ってるんじゃ!」と苛立った経験がありますから、説明にはなっていません。

もしかすると編み物初心者は、最初からきちんとした裏編みはできないものと思われているのではないか、という気にさえなります。最初は我流でいろいろなやり方でよい、そのうちに上達して正しい裏編みもできるようになる、というような感覚がどこかにあるのではないか?そう思いたくなるほど、この難しい編み方に対するノウハウは見当たらないのです。

私たちがホームページに「フランス式表編み」を公開したときから当然「フランス式裏編み」は念頭にありました。とはいえ「表編み」が評価されなかったら「裏編み」はお蔵入りにしようと思っており、半ばはそれに期待したいような気持ちでいました。しかし意外に評価してくれる方が多く、「裏編み」に対する期待も大きいようでした。これにはちょっとまいりました。分からなくて嫌なことなので、ついずるずると伸ばしていたら、非常に礼儀正しく「あの〜まだでしょうか?」というメールもいただいて、うぅ、本当に頭をかかえてしまいました。

裏編みのポイント探し

気を取り直して本腰を入れて考えてみました。針の動かし方、角度、入れる深さ、タイミング、色々と変えて試して見ます。私たちが捜し求めていたのは、ある方法をとると上手く編めて、逆にそうしないと編めない、という1つか2つのポイントです。

例えば跳び箱で跳べない子供は跳び箱に手をつく位置が跳び箱の手前であることが多いのですが、跳び箱の向こう側に手をつくように指導するとそれだけでかなりの子供が跳び箱を跳べるようになります。この跳び箱の手をつく位置に比べると助走をつけるとか、踏み切り板を強く蹴るとか、足を大きく開くとかいうのはポイントとしては劣ります。もちろんそれらも重要なことですが、当面低い跳び箱を跳べるようにする場合には従属的なことでしかありません。これらのポイントが揃っていても手をつく位置が手前だとまず跳び箱は跳べないのです。(跳び箱の場合は、箱に向かって走っていくという人間にとって根源的な恐怖心をどう和らげるかという精神的な要素の方が、体の動かし方よりも重要なのかもしれませんが。)

私達はそのようなポイントを求めて何度も裏編みをし、裏編みのガーター編みという珍妙な編地を作りつづけました。(結構綺麗でした)しかし幾度となく、「これか!」と思って喜ぶのですが、1日もたつとそうしなくてもちゃんと編めることが分かって落ち込む、という繰り返しです。毎日気持ちが晴れません。夢の中でも裏編みをして、朝起きると本当に編み物したとき以上に疲れていたこともありました。

ついに発見

しかし、とうとう契機がおとずれました。お便りを読んでいると、お母さんが子供に教えるのに子供が「速過ぎてわからない」と言われたという話がありました。そういえば昔、裏編みは速く編まないと編めなかったな〜、と思い出しました。そのときは特に気にとめませんでしたが、しばらくして突然ひらめいたのです。慌てて針を持って試して見ると間違いないようです。手ごたえを感じました。 不思議なもので、一つ問題が解決されると続けて他の問題も解消でき、これでついに「フランス式裏編み」を書けると確信しました。

これまで私達はポイントを求めてさまざまな編み方を試みましたが、意識はすべて針先に集中していました。これでは見つからないわけです。フランス式裏編みを上手に編むためのヒントは、「肘の角度」にあったのです。

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