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4. 裏編みの練習方法

4.1 たた式練習法

私たちは「フランス式表編み」で、編むという動作を細かく分解し、「針通し」とか「糸掛け」とかの造語を作って説明しました。裏編みは表編みより手強いため、さらにもう一歩進んで練習方法を考えてみました。つまり、裏編みの初心者のために裏編みの「部分動作練習方法」を考え、この練習方法を「たた式練習法」と名づけました。

言うまでもなく裏編みの動作で一番難しいのは、「糸掛け」です。「たた式練習法」は、「針通し」・「糸掛け」・「目通しと目外し」をそれぞれ別の動作に分解し、それぞれの動作に集中して練習する方法です。さらに、「糸掛け」をマスターするために、いきなり動きから入らず、きちんと糸の掛かる「構え」を最初に練習します。

編み物の「構え」という言葉を聞いたことがある人は少ないでしょう。編み物の手の動きは滑らかに連続しており、停止することはほとんどありません。したがって、静止した「構え」というのは本来不必要とも言えますが「構え」を決めることは上達の助けになるのです。私たちは「裏編みの構え」を針に糸が掛かった形に決めてみました。この構えを練習することでスムーズに裏編みをマスターすることができるとものと思っています。

以上のような事情で、今回は裏編みを一連の動作としてではなく、別々の動作で説明します。しかし不思議なもので、それぞれの動作がきちんとできると、あとは言われなくても連続した動作ができるのです。

4.2 針通し

針通し
左針の目に右針を通します。右針は左針の向こうから手前に持ってきます。右針を左針の向こうにあてるようにして手前に引き出し、目の右側を側面から押すようにします。針先が目の間を抜けたら直ちに右針を上に出して目を通します。針通しは表編みよりも裏編みのほうがやりやすいと思います。それは、目の角度と針を入れる角度が直角に近くなっているからです。表編みの場合は前から強引に目を広げて入れる形になりますので、下目が乱れることがありますが裏編みの場合はそのような影響が少なくなります。実はこの差が一目ゴム編みなどが汚くなる一因ではないかと思っていますが、この話は別の機会にします。

針を向こう側から入れるため、入れ始めの針先が左針にかくれて見えませんので、初心者の場合は一回で通らないことがあります。目と針の位置関係を指同士の感覚で把握できるようになるまではあわてずゆっくり通すとよいでしょう。

4.3 糸掛け

4.3.3 構え方

最大の山場の「糸掛け」です。とりあえず右針を左針の目に通した状態で、構えなおしましょう。下図左のように構えます。この図を良く見ると、手を上から書いているのが分かると思います。自分から手を見てこのような角度に見えるようにしましょう。つまり手を下げてお腹の前くらいに構えます。裏編みを編むときと表編みを編むときとでは、構え方が違います。

裏編みの構え 表編みの構え
裏編みの構え 表編みの構え

表編みの場合は、左手の甲が向こう側を向き、右手の甲が見えています。逆に裏編みの場合は左手の甲がはっきり見え、右手の甲は完全に向こうを向いて親指が上にきています。裏編みを上手く編むには、この構えが重要です。構えがきちんとできていればその後の動きは練習する度に上達します。逆に構えが悪いと何度やっても糸が掛からないことになります。構えをチェックするときは、指先だけではなく、上体・腕・手首のような大きな部分からの位置を確認してください。

4.3.4 左手の構えの意味

左手を内側に回し、左手人差し指を左針の真上に近づけます。これによって左手人差し指に掛かった糸と右針の角度が直角方向に近づきます。人差し指をこの方向に動かすには、指は横には動きませんから腕を内側にねじることになります。この際、左腕はほぼ限界まで内側に回す必要があります。ただし、くれぐれも限界以上に回さないように注意します。反動をつけないで回し、一定時間止めておいても手に違和感が無い場所を限界とします。肘の角度を大きくすることによって手首がより内側に回るようになりますので、手を下げて肘の角度を大きくします。そうすると図にあるような構えができるはずです。

【注意】指は少しは横に動かせますが、これには絶対に頼らないでください。腱鞘炎を起こす恐れが非常に高くなります。

4.3.5 右手の構えの意味

表編みは糸を向こう側から手前に引き出します。そのため、右針の角度は手前に向かって立つような上向きの角度のほうが糸を掛けやすくなります。逆に裏編みは手前から向こう側に糸を押し出すように送りますから、右針の角度は下向きの方が糸が外れにくくなります。右手の手首の返しで、右手を内側にひねった状態では腕の中心線より針が上を向きます。逆に外側にひねると腕の中心線より下向きに針を構えることが可能になります。裏編みをする場合は特に右手を外側にまわしておいたほうが編みやすくなります。(下図参照。赤い線で示した腕の中心線に対する針の角度の変化を確認してください。)

手首と針の角度

4.4 糸掛け

構えがちゃんとできれば、次は糸をかけてもとの構えに戻る練習をします。

糸掛け練習(1)
糸掛け
左手首を外側に回し、右針の上に糸を掛けます。右針先を少し左に動かして糸掛けを補助しても構いませんがあまり大きな動きをすると、将来輪編みをするときに編みにくくなる可能性もありますので、できるだけ左手の動きを中心にするようにしてください。

糸掛け練習(2)
糸掛け2
さらに左手を回します。このとき糸が右針の上を滑って針の根元まで移動し(上図の青い矢印)、右針を通している目の上に掛かるように十分に糸を掛けます。

糸掛け練習(3)
糸掛け3
手首を返して針に糸を引っ掛けます。このとき、最初は難しいかもしれませんのでできなくても構いませんが、慣れてくれば掛けた糸が左針を越えるようにします。(図の青い矢印)糸を返すときに右針が糸に引っ張られるような感じで上に動かすようにすると左針を越えることができると思います。何度やっても越えられない場合は、構えから見直します。掛ける動作に一定のリズムは必要ですが、あまりに速く手を動かさないようにします。

糸を戻し、上図の糸掛け練習(1)〜(3)までを繰り返し練習します。あまりあせって掛けないで、ゆっくりしたテンポで確実に針の根元にがっちりと糸がかかるまで、練習してください。退屈してきたら一目編んでしまってまた、繰り返し練習してください。ここが中途半端だと全体の流れが途切れますから、よく練習してください。練習中に手に違和感を感じたり、痛みが出そうなときはただちに練習を中止して、もう一度構えを見直してください。必要以上に手を内側にひねろうとし続けてはいけません。

4.5 目通し

右針を引くようにして針先を左針から抜きます。このとき、左指にかかった糸の張りを緩めないようにします。左手に掛かった糸を右針で上から押し付けるような感じで、右針の下面と糸の間の摩擦を効かせます。糸が緩んでいると針だけが抜けてしまいます。摩擦が効いていると右針を引いたとき、掛けた糸もひきずられるようになりますので、糸の角度が少し甘くても補うことができます。

糸通し1 糸通し2 糸通し3
糸をかけた右針を手前下に引く。上から押しつけるようにする。 右針が抜ける瞬間。この図を見れば糸の角度が重要なことが分かる。もし、糸が青矢印の方向に向いていれば編むことができない。 右針が左針の下に抜けた。右針を突き上げるように前に出す。

4.6 目寄せ

右針が左針の下に抜けたら、目を寄せます。裏編みの方が目が緩くなる人が多いのは、一つには目寄せが十分でないからです。針先を抜くときに緩んだ隣目との間のシンカーループを引き締めるために糸の張りを保ったまましっかりと目を寄せます。ただし、寄せる際に隣目と一緒に右針の目を押し下げると次に編むときにまた戻さなければならず、編むリズムが崩れますので、必要以上に押し下げないほうがよいでしょう。

糸通し4 糸通し5
新しい目を右針の目にしっかりと寄せる。目通しのときに緩んでいたシンカーループ(S)が締まるようにする。 右針を右に引いて左針を抜く。

4.7 締め

裏目が緩い人は糸を強く締めようとしますが、締めるタイミングを間違うと逆効果になることがあります。どうしても裏目を締める必要がある場合は下図のように次の目を編む前に少し右針を立てるようにしてみてください。このとき左手に掛かった糸と右針とが直角近くになれば、同じ引きの強さでも効果的に編目が引き締められます。なお、このとき左手人差し指を反らせて締めるのではなく、右手で瞬間的に針を手繰るようにしてください。左手人差し指を無理に反らせ続けていると腱鞘炎になる危険がありますので、絶対に左手人差指で糸を締めようとしないでください。左手で締める場合は、左手人差し指を少し内側に曲げて余裕を持たせるようにし、左手首を動かすか、左腕を外側に回転して締めるようにしてください。

糸通し6

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