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初めての帽子 - ワッチキャップの編み方 |
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初めての帽子としてニット帽の基本型、ワッチキャップの編み方を徹底図解します。 |
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この帽子について
輪編みの二目ゴム編で編むワッチキャップは、ニット帽の典型的な形で、初心者でも簡単に編めます。この帽子は非常に暖かいので、スキーやスポーツ観戦、バードウォッチングなどに、一つ作っておくと心強いものです。また、強い風が吹いても飛ばないので、子供にも安心して被せられる帽子です。ワッチキャップは、安い機械編み製品が販売されていますが、アクリルなどの化繊でできていたり、サイズもなぜか妙に小さいことが多く、見た目に反してそう暖かくありません。
このワッチキャップは、同じウール100%でも、市販品とは比較にならないほど上質な毛糸を使って、一目一目をしっかりと編んだものです。手編みの緻密な編地は風をあまり通さず、それだけでも暖かいのですが、サイズに余裕をもたせることでさらに暖かさが増します。頭回りに余裕があると血行を妨げないうえ、被りの深さによって、頭頂部にわずかながら空間が生まれてそこに暖かい空気が残ります。
ワッチキャップは簡単な帽子ですが、今回はサイズ合わせの方法・頭頂部の処理のバリエーション・ポンポンやタッセルを使ったアレンジなど、を紹介します(輪編み針を使っているために減目したくない人でも大丈夫です。)。簡単に編めるため、適当な編み方をすることが多いのですが、カラーバリエーションも含めて色々と工夫すると結構楽しめます。
使用糸
メーカー | パピー |
糸名 | ブリテッシュ エロイカ |
素材 | ウール100% | |
重量・長さ | 50g 83m |
色番号 | 101(青)または 161(茶) |
使用重量 | 90g(2玉)〜 120g(3玉) |
今回の使用糸はパピーのブリテッシュエロイカです。この毛糸は、一般的な極太毛糸ですが、繊維に微妙な乱れがあり、それが非常に味わい深い糸です。ただ、すこし手触りが硬く感じられるため、肌の弱い人は要注意です。(帽子にする場合、私たちは問題ありませんでした。)今回使った糸のうち、101(青)はインディゴの素晴らしい色合いです。ジーンズの色合いが好きな人なら、たまらないと思います。
使用糸は極太毛糸ならなんでも構いません。ブリテッシュエロイカは渋い色合いが多いので、もっとポップな色が好きな方は別の糸を探してみてください。ただし、ぜひウール100%のものを使ってください。頭は結構汗をかきますので、化繊糸では濡れて冷たく感じることが多いのです。そうは言ってもワッチキャップは実用品で、よく汚れますので、洗濯がしにくいような高級素材は注意してください。(アルパカ100%の糸などで、柔らかく編むとそれはそれで可愛らしい作品になりますが。)
使用編針
ラベルにある適合棒針は8号〜10号ですが、今回は7号を使って意識的に固く編みました。ちょっとごわごわするくらいきつめに編んだほうが、風を遮って暖かくなります。6号でもいいでしょう。輪編みにしますので、両方に針先がある4本棒針か、40cmの輪針を使います。
サイズを計算する
帽子のように体にフィットさせる必要がある作品の場合、出来上がりサイズをコントロールする必要があります。幸いなことにこのワッチキャップは伸縮性が高いので、厳密な計算をしなくても被れなくなったりする心配はほとんどありません。この説明がなんだか面倒そうだと思う方や、すぐに編んでみたい人は、下のサイズ表から選んで編み始めても結構です。ただ、将来セーターなどもっとサイズにシビアな作品を編んでみたい方は、このような作品で練習しておくといいでしょう。
サイズ計算の基本
体に合った作品を作るには、正確には次の手順を踏みます。
- 体のサイズを測る。
- フィット性をもとに1.に緩み分を加算して最終的な編地のサイズを計算する。
- 編目の大きさを測定して、2.のサイズに編むための目数・段数を計算する。
1. 頭のサイズを測る
頭の回りのサイズを測ります。右の図にあるように、額の頂点(A)と、耳のすぐ上(B)の場所を通るようにし、頭回りの最も大きい部分を巻尺で測ります。
頭の高さは、簡単には測る方法がありませんので、編みながら被ってみて確かめるか、編み物本から似たような帽子のサイズを参考にするくらいしかありません。しかし、このワッチキャップは折り返し幅の調整で被りの深さはどのようにもなりますので、正確な計測の必要は実際上ありません。下のサイズ表を参照してください。
2. 緩み分
ワッチキャップの場合、帽子が頭に完全にフィットしますので緩みは0です。(ただし、下で説明する「伸びゲージ」を適用するということは、ここがマイナスの数値になることだと考えることもできます。)
3. 必要な目数・段数を計算する
手編みの場合、同じ糸・同じ針を使っても編みあがりの目の大きさは個人差があってバラバラです。そこで、まず試し編みをして自分の編目の大きさ確認します。編目の大きさ(寸法あたりの目・段の数)のことを「ゲージ」と呼びます。日本では、「ゲージ」の単位は10cm四方の編地の目数・段数でを表すのが一般的です。毛糸のラベルに書いてある「標準ゲージ」(右図)も、「○㎝あたり」という指定が書かれていない場合は、10cm四方の目数・段数のことです。また、標準ゲージの編地はメリヤス編みです。(なお、「標準ゲージ」を絶対的な基準と考えるのは無意味です。最適なゲージの大きさは作品によって決まりますし、それを決めるのは作品をデザインする人自身です。)
10cm四方のゲージを取るために、試し編みをする場合は10cm四方より少し大き目、つまり最低でも12cm四方くらいのサイズの編地を編みます。しかし、では何目の作り目をしたら12cmになるのか?それは試し編みをしてみないと正確にはわかりません。2回試し編みをするのはばかげていますので、こういうときはラベルの「標準ゲージ」を参考にして、針のサイズを参考にしながら、目数の見当を付けます。なお、厳密には誤用ですが、一般的にゲージを計算するために編む、試し編みの編地自体も「ゲージ」と呼びます。「ゲージを編む」とは、つまり「ゲージを測るために試し編みを編む」という意味です。(ちなみに、英語ではこのような呼び方はしません。「ゲージ」のことは、アメリカでは gauge 、イギリスでは tension、試し編みの編地はswatch[スワッチ]と呼びます。)
試し編みができたら、編地を伸ばさないようにしながらスチームアイロンで蒸気を当てて目を安定させます。スチームアイロンをかけるときは、編地から浮かせて蒸気だけを当てるようにします。
試し編みを測って、10cm四方あたりの目数・段数が分かったら、それを元に次の計算式を使って目標とするサイズに必要な目数・段数を求めます。
必要な目数 = 必要な編地の幅(cm) ÷ 10 × ゲージの目数
伸びゲージ
通常、セーターなどでは試し編みした編地にアイロンをあてて、そのままゲージを測ります。しかし、このワッチキャップでは、ゲージを測るとき、編地を自然に置いた状態ではなく、すこし引っ張った状態で測ります。このゲージを「伸びゲージ」といい、帽子・手袋・靴下などフィット感が必要な作品で使われます。ただし、同じ帽子でもワッチキャップは普通しっかりフィットさせますが、ハットのように頭に置くような帽子の場合は、伸びゲージを使わないか、伸び率を小さく計算します。
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通常のゲージ(幅約9.5cm) | 伸びゲージ(幅約13cm) |
上の写真は、同じ二目ゴム編のスワッチ(試し編み)ですが、普通の状態では左の写真のように縮んだ状態です。右の写真は、二目ゴム編の表目に対して裏目部分が2:1の割合になるように左右に伸ばしたものです。(これは一般に、ゴム編みが最も美しく見えるとされている比率です。)張りの手加減もこれくらいでよいようです。このときスワッチの幅は約13cmになっています。この場合の伸び率は3割強ですが、編地の種類や糸によって伸び率は大きく変わります。結果として、私たちの伸びゲージは、10cm平方で22目×26段となりました。
言うまでもありませんが、フィット感を強くしたいときは、強く引っ張って測り、弱くしたいときは弱く引っ張って測ります。
サイズ表(10cm平方で22目×26段の場合)
サイズ | 頭回り | 高さ |
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SS | 104目(47cm) | 70段(27cm) |
S | 112目(50cm) | 73段(28cm) |
M | 120目(54cm) | 76段(29cm) |
L | 128目(58cm) | 78段(30cm) |
LL | 136目(62cm) | 80段(31cm) |
一応、サイズ毎に目数・段数を計算して表にしました。しかし、編地には伸縮性がありますので、あまり厳密に考える必要はありません。女性の場合はSかM、男性の場合はLかLLでよいでしょう。Mを編んでおけばフリーサイズとして男女兼用できると思います。子供の場合は、頭回りを測って、同じような比率で計算してみてください。ただし、2目ゴム編みを編む関係上、編目の数は4で割り切れる数にしてください。
ここで表示したサイズに編むと、一般のワッチキャップに比べて頭回りも被りの深さもを余裕がでると思います。極太毛糸100gで収めたい場合は、ここに書いてある段数分だけ編めないかもしれませんが、おそらく実用上は問題ないと思います。余り毛糸を出すのが嫌な方は50g玉2つで編めるところまで編む、というので構いません。
作り目
指で掛ける作り目を必要目数作ります。それから作り目を輪にして輪編みにします。
頭頂部の処理は色々ありますが、そのうちもっとも単純なものの一つがこの方法です。ぐるぐると輪編みを編んで行き、必要段数編んだら、そのまま目に糸を通し、一気に絞って頭頂部を作ります(写真下左)。ただ、この方法は120目くらいの目を一気に絞めますので、必ず締め切れるか分かりません。特に糸がモヘアのように絡まりやすい糸の場合はかなり要注意です。そのような場合は絞める糸を同じ色のシルク糸(刺繍糸)を使い、糸端はくくりつけるということもできますが、どのようにしても穴が空いてしまう可能性はあります(写真下右)。穴が空いてしまったら無理に締め付けて糸が切れると一巻の終わりですので、あきらめて頭頂部にポンポンをつけて穴を隠します。ポンポンを付けるのがどうしても嫌な場合は、ギャンブル覚悟で絞めても構いませんが、(穴が空いたら、糸を切って、少しほどいてから目を拾い直す)、次に説明する、「減目をして目数を減らしてから絞める」、「四点をとじる」方法にした方が安全です。
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うまく絞れた | 締り切れず、穴が空いた |
絞り方
編み終わったら、糸を50cmくらい残して、切ります。残った糸をとじ針に通し、編地の内側を見ながら、で裏目(表側からみたとき。内側から見た場合は表目。)のみを縫って行きます。必ず目の中に確実にとじ針を通すようにくれぐれも注意してください。通し漏れがあると、あとで編目がほどけてくるという致命的なことになってしまいます。
裏目のみに糸を通し終わったら、まずその時点で絞れるだけ絞っておきます(下図左の編地のように編目が寄るくらい絞っておいてください)。あまり端からぐいぐいと無理に引っ張ると、糸と目の間の繊維が絡み合って結んだようになり、それ以上いくら引っ張っても締まらなくなります。編み針の一針分ずつ寄せて行くつもりで、とにかく摩擦がないように引っ張ります。
次は編地の外側を見ながら、表目をとじ針ですくいます(下図左)。とじ針に目を取ったら、裏目は指で編み針から落とします(下図右)。裏目は前回すでに糸が通っているはずです。次の表目にとじ針を入れて、同じ事を繰り返して行きます。この際も時々糸を絞るようにして、なるべく頭頂部の円周を縮めるようにします。
全部編目に糸を通し終わったら、最初はそろそろと、最後は一気に力を込めて糸を絞ります。うまくいきました?うまくいっても、安心はまだ早いです。編地の反発力で緩んでくる恐れがありますし、被っているうちに穴が空くこともありますので、糸端を帽子の裏側に通して、穴のすぐ近くの目の中に糸を通しながら4〜5周、回します。糸端はどこかの編目にくくりつけてから始末します。
穴が空いてしまったか、または最初から予定している場合は、ポンポンをつくりましょう。完成写真のポンポンは直径約7cmです。このポンポンを作る時の厚紙は、幅12cm×高さ9cmで、巻き数50回の物を2つ合わせて一つにしてから、大きなポンポンを作っています。ポンポンをとじ針で頭頂部につけたら、さあ完成です!
この方法は、頭頂部を絞る前に減目をして、編目の数を減らしておきます。減らし方は単純で、必要段数編んだあと、すべての目を「表目の左上二目一度」しながら、3周します。減目が続くので編みにくくなりますが、少々目が緩んでもそう問題ではありません。やりにくい方は「表目の右上二目一度」でも構いません。ともかく、減目するときは全部表目でガンガン減らします。1周ごとに目数は二分の一になりますので、3周したあと、目数は元の八分の一になります。つまり120目なら15目になります。最後は、糸を30センチほど残して切り、とじ針で残った目に通して絞ります。減目がしにくければ、減目するのを2周にして、頭頂部の目を閉じるとき、二周して絞るのでも構いません。ただし、「減目をしない頭頂部」のように、二目ごとにとばすのではなく、一目ごとにとばしながら二周させます。
上の写真が減目をしたあと、絞った頭頂部です。いきなり絞った写真と見比べると、すこし中心のギャザーのより方が違うのがわかると思います。
この方法は頭頂部を絞るのではなく、伏せ止めをします。そうすると、円筒形の編地ができます。その後で、全体を四等分した場所同士を糸で止めます。このやり方ですと頭頂部は閉じず、クローバーの葉のような形に開きます。保温性は少し落ちますが、手編みの帽子が暖かすぎると感じている人にはかえって良いかもしれません。ポイントにタッセルを一つだけ下げてみました。
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後ろから見たところ | 横から見たところ |
この頭頂部にする場合は、帽子の長さが十分でないと、頭頂部の穴から髪が出たりして、かっこ悪いことになる場合もありますので、要注意です。上のサイズ表の段数は十分な長さがありますので、この段数分編めば、まず問題ないでしょう。
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(1) 図のような厚紙(はがきでも代用可)に毛糸を20〜30回巻きます。
(2)タッセルをつるす長さ+15cmくらいに糸を切って巻いた毛糸の下を通します。 |
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(3) 通した糸を堅結びにします。強く結んでください。このとき、くくった糸は片方の長さをタッセルを下げる長さ+とじる長さにし、もう片方はタッセルと同じくらいの長さになるようにします。
(4)厚紙の下部分に沿って、糸を切ります。 |
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(5) バナナの皮をむく要領で、中央のくくり目を覆うように、毛糸を二つ折りにします。このとき頭頂部になるところが奇麗な放射状になるように毛糸を出る方向を揃えます。 |
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(6) 20センチくらいに切った糸で折り返しから2cmくらい下の部分を強く縛ります。1.5〜2周させたら、とじ針で、回した糸を割るように通します。糸の反対側も同じように糸を割るようにして緩まないようにします。糸端はタッセルの下に出します。
(7) (3)でくくった糸端をとじ針にとり、タッセルの頭頂部の中心から上に出します。
(8) 糸端をハサミで切り揃えます。 |
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