ねじり引上げ目とかぶせ目を追加しました。JIS L 0201-1995 棒針編目記号完全制覇達成!
いや〜。やっとできました〜。まぁ、JIS編目記号は全体の編目技法の一部ですが、一応の目標にしてきましたんで、うれしいです。今回、真剣にJIS編目記号全体をチェックしてみて、どうも納得できない部分がありました。色々考えて、やはりJIS編目記号は工業規格なので、機械編みが中心で、手編みにはうまく対応できない部分があると思います。その結果、今回の解説で最後まで残った「かぶせ目」などは実際の手編みの編図で使われることはほとんどありません。私は、「かぶせ目」と「伏せ目」がどう違うのか理解できませんでしたが、最後になってようやく分かりました。「かぶせ目」はすでに編んでいる目(下段の目)を別の目にかぶせる場合、「伏せ目」は編んでからかぶせる場合なのです。そして普通の編み機では、編みながらかぶせるという器用な真似ができないので、「伏せ目」はもともとのJISになかったのではないかと想像します。
今、JIS編目記号を手編みに利用してきたことの功罪を考えると、複雑な気持ちになります。編目記号を組み合わせた編図は模様編を設計するツールとしては便利です。しかし、一方で表現力に限界があります。Debbie Bliss さんのToy Knits にあるような編ぐるみのパーツを編図にできるでしょうか?そこまでいかなくても、手袋でさえ、編図だけでは表現しきれず、別の説明図の助けが必要です。しかし、なにより問題だと思うのは、編目記号にない編み方がどんどん廃れてしまっていることです。表現が技術を規制してしまっているわけです。手編みはもともと輪編みのように、立体的に造形していく技法でした。しかし、現在では手編みにおいても機械編みのように平面的に編地を作り、あとではぎあわせる技法が一般的になってきています。これが一概に悪いわけではありませんが、そのためセーターは編めても靴下や手袋が編めない人が増えているような気がします。豊かな技法がこのような理由で狭められるのは悲しいことですが、メディア上での有効な表現手段がないとこの流れを変えることは難しいのではないでしょうか。これは日本で手編みをする人すべてに突きつけられている問題だと思います。