アリス・スターモア毛糸、手作りの糸見本帳

ちょっと前に、色の名前だけでアリス・スターモアの新糸を購入した話を書いたのですが、実はその後も似たような事をしています。しかし、今日届いた荷物の中に思いもかけないプレゼントがありました。それは、手書き・手作りの糸見本帳です。写真では分かり難いのですが、厚紙にパンチで穴を開け、シルバーのボールペンで色名を書き込んで、パンチ穴に毛糸を通す、という面倒この上ない糸見本帳です。この糸見本帳セット一つを作るのにいったいどれくらいの時間がかかるか、想像も付きませんが、こんなに手のかかる糸見本帳はそれほどの数は作れないはずです。これは、世界中のスターモアファンが今一番欲しい宝物なのです。

0110032.jpgよく見ると、厚紙はカッターナイフで切って折った後がありますし、定規で線を引くときに当たりをつけた印も見えます。どう考えても、プロの仕事ではありません。おそらく、オフィスでスタッフが合間を見つけて作っているのでしょう。台紙の出来栄えにはほのぼのとした稚拙さが感じられるのですが、付いている毛糸はそれとは釣り合いのとれない、驚くべきプロの仕事です。

小包を持っても中身が入っていないのではないかと心配になるような軽さといい、若々しく滑らかな肌触りといい、輝く艶といい、深みのある色といい、何度見てもほれぼれします。すべての色がすべて欲しくなるような糸見本帳はそう出会えるものではありませんが、この手作り糸見本帳はまさにそういう一品です。ヘブリディーズ諸島の湿地を覆うつややかな苔のような緑、枯れた牧草地を思わせるさまざまな色が絡まりあった褐色、大西洋の紺碧、夕焼けの茜、これらの色一つ一つに鳥や植物や貝の名前が付けられていて、糸見本帳を見ているだけで想いは一瞬のうちに日本からスコットランドへ飛んでいきます。あぁ、この糸でセーターを編んでみたい、この糸でスカーフを編んでみたい、この糸でジャケットを作ってみたい、ストレートにそう思える糸に出会えることは、編物ファンならこれ以上ない喜びです。しかし、こういう糸を作ろうという発想力自体が大変なものですが、それを実際に作ってしまうとは…驚愕です。これこそが伝統の力というものでしょう。ウールに関するイギリスの懐の深さは、私たちの想像をはるかに超えているようです。

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