編み物の歴史には大変なギャップがあります

編物の歴史の本を読んでいると、中東から発掘された大体5世紀ごろの「コプト人の靴下」から始まるんですが、突然15世紀の貴族や聖職者用のシルク製手袋やストッキングに飛んで、その後、フェアアイルやらアランセーターになります。なにか断絶ありすぎませんか?実用品→貴族奢侈品→実用品(商品)ですからね。私たちはちょっと気に入りません。中世にはニットの靴下はなくなっていたんでしょうか?いや、もちろんあったはずです。「名画による歴史探訪」(ローゼマリー・ハーゲン、ライナー・ハーゲン,岩波書店,1996)によると、スペインのフェリペ四世に嫁ぐため、ウィーンからマドリッドにむけてマリアーナ王女が移動中に通ったある町で、職人たちが彼女に百足の靴下を献上しようとしたことがあったそうです。

同行していたスペインの執事長はこれを無礼とみなし憤然と突き返して、こう言った、「スペイン王妃には[下々のような]脚などござりませぬ。」するとマリアーナがぎょっとして聞いたそうな、マドリッドに着くと脚は切られてしまうのか、と。

このようにヨーロッパ貴族の目で見ればニットの靴下って下々の取るに足らないものだったわけですが、そのような価値観に影響される必要はないんではないでしょうかね〜。そもそも中世において編物の中心地が果たしてヨーロッパだったのか、という疑問もありますけど。

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