かつてこんなに熱い編み物本があった!「チャレンジニット男が編む!!」

ひとくくりに言うのも問題ですが、最近の日本の編物本で面白いものは少ないです。どれも似たような構成で、熱気が伝わってくるような本に出会うことがなくなりました。ソフトウェアでも「気合の入った」ソフトと、「仕事だから」と作ったソフトは、ちょっと動かせばたちまちわかります。最近出会う編物本はたいてい「仕事だから」系の本のように思えます。昔はよかった、というのは歳をとった証拠なので言いたくはありませんが、昔の「アツイ」編物本を一冊紹介したいとおもいます。「チャレンジニット男が編む!!」(日本ヴォーグ社,1983)です。

この本はそれまでの編物本とはまったく違います。いきなり男性の編物未経験者にセーターを編まそう、というのもハチャメチャな企画ですが、そのセーターたるや、手抜きなしのクルーネックセーターで、脇のカーブも肩下がりもちゃんとあります。さすがに襟の止めは二目ゴム編止めではなく引き抜き止めですが、それでも初心者には大変な代物です。そのあともVネックアーガイルベストだのアランセーターだの、のけぞるような難物ぞろいです。作品だけではなく説明も、すべての動作を写真で説明するのですから大変な手間がかかっています。写真に写っているのは説明する作品そのものですから、使いまわしができません。ちょっとした隙間つぶしのコーナーも、読者に実際に編ませた体験記など手間のかかるものばかり。ところどころに書き込まれたメッセージも思い入れたっぷりで、表紙には「その昔、編物は男の仕事だった。海の男たちの手でフィッシャーマンセーターは生れた!!編物は今男達の手にもどる。この本を男に限らずすべてのチャレンジャーに贈る。」で、アランセーターの説明の最後は、「これを処女作に選ぼうという読者は、相当の覚悟と期待を持って取りかかってもらいたい。完成を祈る!」です。まぁ、表紙の文句は、前半は男が編むのだ!って突っ張ってて、後半は誰でもいいから買って、って軟弱になってるし、アランセーターの文句も良く読めば、結構無責任な感じなのですが、そのような揚げ足取りを問題にしないほど、紙面から熱気がムンムンと伝わってくるのです。(いや〜それでも第一作にアランはちょっと…?)

チャレンジニットシリーズは4まで出ましたが、一番面白いのはやっぱり1です。(1という番号は入っていませんが)古本屋・図書館で割に見掛けますので、興味があるかたは迷わずゲットすることをお勧めします。

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