編み物と気候の関係を考えると、やっぱり本場は極北?

ウールのニット製品というのは、どう考えても寒い国が本場のような気がします。ニットが生み出されたのは東方のようですが、現在ニットの本場というとやはりシェットランドとかノルウェーのように、相当北の国です。シェットランドなどはメキシコ湾流という暖流がなければ、おそらく雪と氷に閉ざされているのではないかというような緯度にあります。そのような気候が文化に及ぼす影響というのはどのようなものなのでしょう?「サイゴンから来た妻と娘」(近藤鉱一、1981、文春文庫)は、著者がベトナム人女性と結婚した新聞記者の方なのですが、色々なカルチャーショックの話がとても面白い本です。ベトナム人はヨーロッパの人と同じく生卵がダメなようで、旦那さんがご飯に生卵をかけて食べていると奥さんは身震いがするそうで、ああとんでもない野蛮人と結婚してしまった、とまで嘆くのですが、旦那さんはベトナムで「ビトロン」(アヒルの卵のふ化一週間前くらいのものをセイロで蒸したもの)をゆで卵かと思って割って「椅子から転げ落ちんばかりに驚いた」そうです

夫婦はベトナム戦争が激しくなって、東京に戻るのですが、「彼女にとって東京の八月は、生まれてはじめてのムシ暑さだった。」とありますから、東京の夏は世界一暑いという噂はまんざら嘘ではないのかもしれません。そのため、日本米が胃にもたれて外米に変えます。しかしやがて秋が来るとおかしくなります。

毎週、腹一杯つめ込んでいるのに、なぜか夜中になると体の力が抜けてしまうのだ、という。別に疲れが出はじめたわけでもない。体重も減っていない。それでも体の中心がスカスカになった感じでどうしても頼りない。いろいろ考えていたが、やがて、
「おコメのせいじゃないかしら」
といいだした。
「コメよりも、お前さんの水加減のせいじゃないか」
と私はとぼけた。
なにしろ、内地米は秋に入ってまた値上がりし、10キロ4000円近くになっていたのだ。

というやりとりがあって、結局日本の米に変えてしまいます。不思議な気がしますが、その土地その土地の文化や食生活というものは、やはり気候風土によって左右されるものなのですね〜。この亜熱帯の地のニットはこれからどのような文化に変わって行くのでしょうか。おそらく外米(インディカ種)と日本米(ジャポニカ種)の違いではすまない変化があるものと思わずにはいられません。

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