「Woollies けいと大好き」のタスマニアウール

私たちは、二人とも模様編みが大好きです。アランのような立体的で大きな「彫刻的」模様編みも好きですが、とにかく小模様が大好きです。ちょっとした表編みと裏編みの組み合わせで意外な効果が生まれるのは何度体験しても楽しいものです。ローワンマガジンなどを見ると、細かい地模様編みの作品は結構みるのですが、日本ではそれほど人気がないのか、あまり見かけませんね。

また、私たちはカラフルに染め上げられた毛糸ももちろん大好きですが、未染色のナチュラル糸は特に興味があり、シリーズの中に未染色糸があるとたいてい試しに買ってしまいます。

そんな私たちが最近出会ったのが、右の「タスマニアウール」です。(写真をクリックすると大きな写真が表示されます。)タスマニアはオーストラリアの南に位置しており、大きさは北海道より少し小さいくらい、世界遺産に登録された、自然の美しい島です。タスマニアンデビルという恐ろしい名のついた有袋類はよく動物番組に出てきますので、ご覧になった方も多いでしょう。

オーストラリアの羊毛産業は有名ですが、私たちはタスマニアウールという素晴らしいウールのことは不勉強にも知りませんでした。しかし、今回入手した糸を見て、目を見開きました。まず糸全体に艶があり、触ると高級糸特有のヌメ感が手に伝わります。編んでみると針や指に毛糸に残った脂分がまわってきます。それが、動物の脂が手に付いてべたべたするというようないやらしい感じではなく、まるでワックスがけをしたようにつやつやと光ってくるのです。もちろん編み心地は最高です。編地は腰があり、これで編んだセーターなら一生物ではないかと思わせるようにしっかりと仕上がります。

色にも驚きました。最初に買ったのは、3種類のグレーです。写真では色合いが分かり難いと思いますが、実は本物を見ても分かり難いのです(笑)。比較なしで一本だけ見たらわからなくなるような微妙な色の違いです。その色合いですが、グレーというよりも「鼠色」と呼びたいくらい、まさに動物の体色を思わせる色合いです。編んでみると、毛色の違いが本当に微妙な段染めのように乱れとなって編地に浮かびます。機械紡績してあるのがかろうじて現代文明の製品であることを思い出せてくれますが、手紡ぎされた糸ならどうなるのか、想像するだけでワクワクする自然味たっぷりの糸です。思わず「野にして粗だが卑ではない」という城山三郎氏の小説の題名が浮かんでしまいます。

010617-1-s.jpgまた、おなじタスマニアの糸で、「バルさんの糸」も入手しました。こちらは、白いメリノウール、それにベージュの糸です。こちらのほうは「ボンダさんの糸」よりも洗練されていて、より柔らかく、ワラなどの異物も少なく、製品としては上のような気がします。

メリノウールは、自然の色とは思えない、輝かしいばかりの白です。ただ、人工的に作った白にはない柔らかい、牛乳のような白です。毛の繊維が極めて細いのでしょう、手触りはふわふわです。もちろん、ヌメ感もありますが、編地を強く握ると微妙にベビーパウダーを指先で握ったようなきしみを感じます。いうまでもなく、化繊の不愉快なきしみとは別の、細かい繊維同士が擦れ合うような感じです。

ベージュの糸は軽く、ふんわりと暖かい編地で、こんな上等な糸で編んだセーターがあれば、何万円したところで惜しいとは思わないでしょう。

010617-3-s.jpgこんな糸に出会ったので、もう二人とも夢中になってスワッチを編みました。私たちはスワッチを「試し編み」とは思っていません。それ自体が「最小の作品」です。糸の性質や色合いを考えながら、色々な模様を試しながら、編んでみる。これがなにより楽しい。できたスワッチを触ったり、揉んだり、手に当てたり、お腹に当てたり、そうこうしているうちにだんだんとセーターのイメージが固まってくる。そうすると今度は模様同士の組み合わせや縁編みをつけたスワッチをまた編む、これの繰り返しです。最後の作品がたまたま着れる、というのはさすがに大袈裟すぎますが。しかし、そのスワッチがこんな編みやすく手触りのいい糸だと、最高の贅沢、編物冥利、ここに尽きます。今回いくらでもスワッチが編めるように7キログラムの糸を求めました。楽しみはまだまだ続きそうです。

それでは、今日のよもやま話はこの辺で…。いや、ちょっと引っ張りすぎましたね。それでは出し惜しみした肝心の一文をここで出しましょう。この糸は、Woollies けいと大好きのホームページで通販していただけます。ただ、残念ながら「ボンダさんの糸」は私たちが買ったのが最後で、当分入荷できないそうです。(事情はホームページに書いてあります。)また、「バルさんの糸」は8月末頃発売予定の糸です。すぐに手に入らないのはもどかしいかもしれませんが、今年の秋の楽しみが一つ増えたと思って、発売を楽しみに待ちましょう。もちろん私たちも、まだまだ買い足す計画です(笑)。

Woollies のホームページはリンクのページにも追加しています。

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