「どうやって編物を覚えたか」ふたりの話

アメリカのAboutというサイトにHow We Learned To Knit、「どうやって編物を覚えたか」というテーマで読者からの投稿を掲載しているところがあるのですが、そこを読んでいて文章の上手いのに驚きました。ミニドラマのようにまとまっていて、メリハリがあり、締めもしっかりしていて、編物を中心にした人生模様が浮かんでくるような文章が多いのです。本当に素人の文章なんでしょうか?現在8ページまでありますので、おそらく100人近い投稿があるものと思いますが、先頭ページの2つだけ訳出しておきます。

バーバラ ベルキャストロとても昔のことになります。私は脊髄に損傷を受け、医者にもう二度と歩けないと診断されました。 貧しい両親は本当に困りました。両親は私のほかに3人の子供がいて世話をしなければなりません。 どうしたら、私を退屈させないでハッピーな気持ちにしておくことができるでしょう?

お父さんは私に本を読むことを教えてくれました。それは時間を忘れさせてくれました。ある日、私が 本を読むのに疲れたとき、お母さんは私の兄弟のためにミトンを編んでいました。そして、私に 編物を教えてくれました。私は最初に編んだ編地があまり綺麗じゃないので落ち込みましたが、 お母さんが「練習よ」って言ったので、練習しました。そのあとすぐに帽子・ミトン・マフラーを 編みました。

私が上達すると、お母さんはセーターの作り方を教えてくれました。そして現在、私は今でも編むこと 大好きです。医者の診断が間違っていて、もう一度歩けるようになった今でも。 お母さん、いろんな手芸を、特に編物を教えてくれてありがとう。

マージョリー アノット私はスコットランドのハイランド地方の小さな村で生まれました。村の男達はほとんど農業や漁業にたずさわっていました。そのような中で、私は銀の匙をくわえて生まれてくる※1代わりに編み針を握って生まれてきたのです。

母と祖母は二人とも、熱心な編み手で、海で働く親類の男達が寒くないように、大きく分厚いアランセーターを編みつづけていました。男用の編物がなくなったとき、お母さんは私達子供(女二人男一人)のために、フェアアイルのカーディガンやセーターを冬に寒くないようにと、編んでくれました。このため、私はとても小さいときから編物がしたくなり、5歳の誕生日に自分の編み針をもらいました。

私は盲目でしたので、編物の技法をマスターするのにしばらく時間がかかりました。しかし、根気よく忍耐づよく練習した結果、私は6ヶ月後に初めてのガーター編みのマフラーを完成させることができました。それからというもの、私はとにかくいっぱい色々なものが編んでみたくてしようがありませんでした。私はもう数え切れないほど沢山の四角い編地を編みました。そしてそれを縫い合わせて人形や赤ちゃんの毛布を作りました。私が初めて一足の靴下を編んだのは8歳の時と覚えています。

私は13歳でスコットランドのエジンバラにある盲学校に行きました。もちろんそこでは手芸の一つとして編物の講座を週2回受けることができました。私達の編物の先生は、信じられないかもしれませんが、目が見えないだけではなく耳も聞こえませんでした。しかし彼女は私に本当に編むことを教えてくれた人だったのです。もちろん母や祖母もずいぶん助けてくれました。しかし、私が最大の賞賛をおくらなければいけないのは彼女、ミス ダッフィンでしょう。ミス ダッフィンは、盲目の聾者でしたが、彼女が注意したことは本当に驚くべきことでした。おそらくそれは視力の備わった人には決して誤りとは考えられないようなことでしょう。

私は最終試験の面接のことが忘れられません。そう、私は編物の試験を受けたのです。私は本当に美しいレースのベビードレスを編み、自分が試験日までに完成させたことをとても嬉しく誇りに思っていました。ミス ダッフィンはそれを調べて、いい仕事をしているといいました。そして息を継いで、こう言ったのです。「ちょっと来てこれを見なさい。」彼女は、私の手を取って本当に小さな糸の結び目の上に置きました。そして、四角になるまで編みほどいてやり直すように告げました。その日の午後私は声をあげて泣きましたが、このことを考えながら長い年月を経た後、私はミス ダッフィンが私の仕事に「完璧」という贈り物をしてくれたことに気づきました。今日の私はそのおかげです。私は無視してもかまわないような最小限の過ちであろうとも、それを見逃すことは決してしないのです。

私は未熟児の帽子や上履きからクィーンサイズのベッドカバーまであらゆるものを編んできました。 私は完璧に仕上げるということを愛し、楽しんでいます。そして、完璧だと胸を張れる作品を完成させるたびに、いつもミスダッフィンへの感謝の思いが浮かぶのです。

※1born with a silver spoon in one’s mouth(銀の匙をくわえて生まれる) = 富貴の家に生れる

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