編み方も国際色豊かですねえ

世界の車窓からという番組は有名なのでご覧になっている方も多いでしょう。私たちもときどき見ますが、この番組のホームページに「編み物おばさん」(http://jp.fujitsu.com/train/portugal/1018.html” デッドリンク)という写真を見つけました。拡大してみると、編み方は「ギリシャ式」でした。右手に糸を掛ける編み方を「アメリカ式」というのもずいぶん不正確で、アメリカの手芸雑誌でも、すこしアカデミックなハードカバーでは「右手に糸を掛ける編み方」と表現されることが多いようです。この編み方も「ギリシャ式」は不正確なので、あえて言えば「首に糸をまわす編み方」とでもなるのかもしれません。この編み方は、トルコ・ギリシャなど明らかに東方社会やその近辺で編まれています。しかし、この写真はポルトガルでヨーロッパの西端になりますから、一瞬飛び火したように思えますが、スペインのアルハンブラ宮殿などに見られるように、スペイン・ポルトガルはアフリカからジブラルタル海峡を越えて伝わった東方文化の影響が濃いところです。おそらく、ペルーの編み方がこの編み方なのは、「新大陸」を発見してインカ帝国を亡ぼしたスペインやポルトガルの影響ということでしょう。このような編物の地域性もやがて失われていくのかもしれません。

ただこの写真を見ていると、この編み方は想像よりも編みやすいのではないかと思えてきます。もしかすると番組では実際に編んでいるシーンが出てきたのかもしれません。ビデオになっていたら借りてみたいと思います。

日本では、アメリカ式からフランス式に編み方が移行しているようです。そのせいで、アメリカ式よりフランス式の方が新しいように思いますが、ある説では歴史的にはフランス式の方が古いのだそうです。もともと編物はかぎ針編みが最初に発明され、その後ヨーロッパで棒針が発明されたということになっています。(本にはそう書いてありますが、私たちはどうも根拠が薄いと思っています。)ご存知のようにかぎ針は左手に糸を掛けます。そのかぎ針を棒針に換えたフランス式がまず誕生し、その後新しい編み方としてアメリカ式が生まれた、という説です。この説もどういう根拠かわかりませんが、いったんは、そうかもしれないと思わせる説得力がありました。ただ、この説をとなえる人が、アメリカ人で、最後にアメリカ式の方がフランス式より優れた点が多い、という結論になりますので、この結論を引き出すための前振りだとすれば、最初の歴史話の信頼性も急に薄れてくるような気もするのです。

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