編目記号と編み方のすべり目・浮き目に関して、補足説明を追加しました。
たた夫の風邪へのお見舞いメールありがとうございました。ほぼ良くなりました。ご心配をおかけしてすみませんでした。
編物といえば、現在ではウール製品というイメージが強いと思いますが、昔は絹や綿・金属糸なども一般的で、必ずしもニット=ウールということはなかったようです。しかし、ウールという素材がなければ今日のニットファッションもなかったでしょう。ウールという天然素材はいまだに化学繊維の及ばない性質を持っているようです。
ウールを生み出す羊が家畜化されたのは今から一万年前、オリエントの「肥沃な三日月地帯」だったとみられています。ここは言うまでもなく農耕の起源とされる場所ですから、農耕と牧畜は同じ場所を起源に持っていることになります。農耕によって食料の生産性が上がり、人口密度が増え、また家畜化された動物も密集して飼われるため、人間通し、家畜通し・人間と家畜の間の接触が増えてきます。実は、今日疫病として恐れられる病気の起源はこのような接触によって生み出されたもので、それほど起源の古いものではないそうなのです。
今回、たた夫が苦しめられたインフルエンザも、もともとは鳥類に感染するウィルスなのです。中国南部の地方では、水鳥・豚・人間が濃密な接触関係にあり、もともと鳥類を宿主としていたはずのインフルエンザウィルスが豚に感染し、豚の体内で生き残るために変異がおき、そして人間へ感染する新しい変異が起きる、というサイクルで新しい型のインフルエンザウィルスが生まれてくるというメカニズムらしいのです。
1917〜1919にかけて、数千万人を死に至らしめ、ドイツが第一次大戦に破れる原因の一つとなったスペイン風邪もインフルエンザの一種です。ただ、ここまで致死率が高かった理由は今も分からないため、スペイン風邪で亡くなり、永久凍土に埋められた遺体から、スペイン風邪ウィルスのDNAを抽出しようという研究があったそうですが、万一スペイン風邪を再度この世によみがえらせてしまうようなことがあったらと思うと、「アウトブレイク」のような恐怖を感じたことを思い出します。
ウールやダウンや皮革で、人間に暖かい衣服を提供してくれる家畜、そして一方で死の病の生み出される温床でもある家畜。今回のたた夫の病気のあと、ウールのセーターに手を通すときに、ふと考えさせられてしまう一瞬がありました。