アメリカ式とフランス式の比率

統計結果10万アクセスプレゼントのアンケートのうち、編み方の統計はフランス式129人:アメリカ式41人で、フランス式の圧勝という結果になりました。ただ、私たちのまわりで見る限り、この数値よりはアメリカ式の方が多いような感じがしています。そういう意味でちょっと意外でした。

ご感想の中に「年配の方にアメリカ式が多いというのにショック」ということが書かれてあったので、誤解されているかもしれないと思い少し補足しますと、私達はアメリカ式を否定するつもりはないですし、アメリカ式で編んでいる方にフランス式への転向をすすめるつもりもありません。どちらを選ぶかは個人の自由です。

世界的に見ると、アメリカ・イギリス・オーストラリアなど英語圏の大部分がアメリカ式ですから、おそらくアメリカ式で編んでいる人が圧倒的に多いでしょう。アメリカ在住の方から「フランス式で編んでいたら手元をじっと見られて、変わった編み方をしているといわれた」というようなお便りもいただいているくらいです。

編む速さに関しては、フランス式のほうが速いというのが定説のようですが、”A History of Hand Knitting(Batsford,1987)”を著したRichard Rutt司教は、フランス式の編み方は19世紀ころにドイツで発明された、より新しい編み方であるという推定をしたあと、次のような異論をとなえています。(引用文中で、ドイツ式=フランス式・イギリス式=アメリカ式です。あぁ、ややこしい)

しばしば、ドイツ式はイギリス式よりも速いと考えられているが、これは必ずしも正しくはない。ドイツ式で速く編めるニッターであっても、もっと古い編み方で編むシェットランドのニッターの速さに及ばないことが多いのである。

また、”The Priciples of Knitting”(Simon & Schuster,1988)の中で、June Hemmons Hiatt氏は、「フランス式は古い編み方であるといういくつかの証拠がある」とRutt氏とは逆の説明をし、フランス式には(1)裏編みが難しい。(2)右針を糸に掛けるように動かす必要があるので、特殊な編み方をする場合、技法上の困難に出会う、というような問題点があるので勧めない、と意見を述べています。その後で、あえてフランス式の利点といえば、と次のように書きます。

この編み方が好まれる、一番の理由編は編む動作に無駄がなく、疲れないこと、そして速いことである。熟練したニッターの手になれば、それは本当にとても速い。

う〜ん。とてもと強調するほど速く編めるというのに、その編み方を勧めないというのは、ちょっと違和感がないわけでもないのですが、まぁ、速さだけがすべてではないということで納得することにしましょう。(ラット司教の文などは、ちょっとお国自慢というかプライドのようなものも感じられますね。)実際、ある程度慣れれば、どちらの編み方でも趣味の編物には十分な速さで編めると考えてよいと思います。もし、アメリカ式でもっと速く編みたいと思うのでしたら、英国流にシースやニッティングベルトの利用を考えてみてはどうでしょうか。右針がこれらの補助具で固定されれば右手は完全に糸を掛けるためだけに使えます。もし、シェットランドの伝説のニッターと同じく一分間に300目が編めるという人がいましたら、ぜひ一度妙技を見せてほしいものですね〜。

これから始めるという人は、日本の場合は本やテレビで一般的なフランス式がやはり得、とは思いますが、すでにアメリカ式で編める方は無理に変える必要はないと思います。もちろん両方で編めると編み込みに便利ですから、別の編み方を練習することは損にはなりません。「どちらがいいんだろう?」と真剣に悩んでいるのでしたら、「両方ともやってみよう」というようにチャレンジしてみることをお勧めいたします。

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